その時、がらりと入り口の引き戸が開いた。

みんなは飛び上がった。Bは蒼白になっていた。

だが、それは期待していた様な、恐れていた様な異変ではなかった。

「おい、お前達、何してる。」

入ってきたのは物理化学の教師。生徒からは昼行灯と呼ばれるぼうっとした容姿の教師だった。

「ここの教室、締めたいんだ。用事がないなら帰ってくれるか?」

みんなは顔を見合わせる。心の中で『生徒指導の先生じゃなくて良かった』と思いながら。

反応のない生徒達に途方に暮れたような顔をする教師にCが声をかける。

「先生、悲しい顔しなくても帰るってば。」

その言葉でみんなは含み笑いをしながら教室を出て行った。

『面白くなってきた所なのにね』とその後ろ姿は言っていた。

見送った教師は悲しそうにため息をつく。

「変な噂ばかりが広がるものだよな。」

そのため息を後ろに聞きながら、あたしは外を走っていくみんなを見送った。

誰聞くともなく教師はまだ話している。

「そこにいるお前も、こんな噂になって悔しいだろうが悪く思うなよ。」

うん。大丈夫、別に5年前の事故のせいで今こんな所ふらふらしてるけど、単に

向こうの世界に行く為の順番待ちをしてるだけで誰も恨んではいないし。

ただ、そうね。人の事を勝手に男にしてる人や悪霊にしてる人には言いたいかな?

『名誉毀損だぞ。』って。

ここで、事故が起こっているのはみんなが真面目に授業を受けていないから。

遊んでいて起きた事故をあたしのせいにしてごまかしてるだけなの知ってるし。

あたしには反論できないから『自分じゃないよ。』って言えないから。

そのうち、あっちで会う事になったらAみたいな子には一言文句は言いたいけどね。

教師はもう一度ため息をつく。

本当は、一番謎なのはこの人かも知れない。あたしの事気が付いている様なんだよね。

でも、ま、それは追求しない事にしてる。だってそろそろあたしの順番待ち終わるし。

そしたら、もう会う事もないだろうから。




教師は、扉を閉めて出ていった。

また明日まで、または順番待ちが終わるまで、あたしはまた退屈を紛らわす為に生徒達を観察する。

明日は、どんな事が起きるんだろう。



                                                        ……Fin

以下、後書きです。興味のない方もいるかも知れませんので反転にしておきますね。                  

昔からず〜っと気になっていたんです。怪談とかって、本当の事なのかなって。
魂とか、念とかを信じていないと言えば嘘になる程度には興味はありますが、今言われている事
って、当人達にとっては「あたしゃ、そんな事してないよ」とか、思う事なんじゃないかなって。
本当に力のある霊能者も居るんでしょう。でもその人たちも昔のその原因の騒ぎについて
本当の事情まで判っているかというと……どうなんでしょうか?
「冤罪よ〜〜っ」って言いたい人たちも本当は居るんじゃないかなと(苦笑)
後、今回は本当はもっと人数の居る女の子達の中で3人だけピックアップして話を進めてみました。
あんまり話をする子を増やすと長くなりそうなので(苦笑)あなたはどのタイプですか?
私?私はBかな(笑)ええ、前に笑われたのですが人を怖がらせようとしているその「情熱」が
一番怖いのでそういう話が嫌い。(笑)なんか、悪いもの呼び寄せそうじゃないですか〜。

所で最後に出てくる教師は「余月」の原型です。そんなに長い事抱えてたネタがこれですから(涙)
相変わらず進歩はたいしてしてないらしいです。
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